日本財団 図書館


 

3)アンケートの結果から考えられること
埼玉県内の小中学校の教員は共に、環境教育に対する関心が9割前後と非常に高く、これは現代の地球環境問題に対する世間の関心の高さを反映している。ところがその一方で、現実に環境教育が行っている教師は、6割以下と半数をわずかに超えたに過ぎない。すなわち、関心は持っていても実際に環境教育を行ってはいない教員が全体の1/3を占めていることがわかる。
関心を持っていながら、環境教育を実際に行っていない理由は何であろうか。質間6の結果に現れたように、小学校、中学校ともに環境教育を行う余裕がない、あるいは環境教育をどのように進めたらよいかわからないとの回答が多かった。どのように進めたらよいかわからないという回答は、現在の日本における環境教育指導者の育成が十分になされていないことを示唆するものである。また、余裕がないという回答から考えられることの1つは、日本の学校教育のカリキュラムの中に環境教育をとけ込ませる余地が少ないという可能性、2つ目には通常授業内でいかに環境教育をとけ込ませていくか、という訓練が教員に対してなされていない、あるいは情報が不足しているため、という可能性が考えられる。これは先の、「どのように環境教育を行えばよいかわからない」と共通するもので、環境教育に関する教員研修の充実等の必要性を示唆するものである。
環境教育を行う教科としては、小中学校ともに社会、理科、国語、道徳に重点が置かれ、小学校については5番目に生活科が挙げられている。生活科は小学校低学年でしか行わない教科であるにもかかわらず、このように多くの教員が環境教育を行う教科として指摘している。ここで低学年、中学年、高学年と各学年ごとに分けて、環境教育が行われている教科の分析を試みた。小学校低学年の教員のうち、約4割が生活科で環境教育を行っており、逆にその他の教科はかなり少なかった。一方中学年、高学年では社会科、理科に重点が置かれている。生活科は、低学年において社会、理科を統合して体験学習型のものとしてできたもので環境教育に最も取り組みやすいものであることがわかる。この生活科で環境教育を行うという流れが中学年、高学年になって、理科と社会に分かれても受け継がれているのが見られる。また、国語で環境教育を行う教員の割合が、高学年になるに従って顕著に増加するのが見られる。高学年ほど国語で環境教育が行われるのは、高学年の国語教科書の内容に、公害や社会問題を取り扱った文章が多く登場することと関係深いと考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION